アスラン生誕記念リレー小説

僕はアスランが未だ眠りの中にいる間に、

多少重い体で立ち上がり、一糸纏わぬ姿の上に投げ出されている間白いシャツを羽織った。

今までの悩みも重なって、疲れているのはアスランも同じだろう。

そう思うと少し微笑ましい気分になる。

その気持ちが分かった今、多少違和感があるにしろしてみることもあるだろう。

 

 

比較的明るいリビングと繋がったキッチンへと足を運ぶと、朝特有のさわやかな風が入った。

いつもの朝。

いつもの……

 

「いつもって何だろう…。」

 

疑問を口にした瞬間、寂しくも感じた。

何故かふいに『いつも』が無くなりそうで。

 

小さく身震いがし、両腕で自らの体を抱きしめると落ち着いた。

でも、治まっていないのは体ではなく中身で。これだけはどうしようもなかった。

そんな時。

 

わざわざ擬音をつけるなら“ふわっ”という感じなのかもしれない。

 

「アスラン…いつもタイミングがいい時に来るよね。」

「………」

本当に嫌なタイミングだ。

まるで僕の事が分かるかのように側にいて、その両腕で抱きしめてくれる。

 

「消えるかと思った。」

「え?」

唐突な一言に驚きの声をあげる。そう見えたのかと。

「雰囲気かな、信じているはずなのに。」

仕方ないと割り切れない自分に気付いていた、と苦笑するアスランをどのような目で見てよいのか分からなかった。

ただ今できる事は限られているのだと。

「僕は何処にも行かない。行けないんだ。君が一番知っているでしょ?」

黙るアスランの口を開かせようと、拘束されている腕を逆に引き顔を向けた。

「・・・何て顔してるんだよ、アスラン・ザラ」

「別に。キラと同じだから、俺も此処しか居られないはずだ。」

「面倒な言い回しはいいよ。僕が知っているのはそんな君じゃない。」

人が言うなら不敵な笑みを浮かべて手にしている腕を寄せ、唇を触れ合わせた。

「珍しいな」

「・・・特別だからね」

そんな顔をして欲しくなくてしたものだけれど

ちょっとやり過ぎたかと思い俯くと、アスランがそれを許さずに手をかけた。

「気持ちはあるんだから、自分で決めた事に嘘はない。それだけ分かっていてくれているなら嬉しかった。」

「当然な事を今更のように言うよね。」

 

傷を抉るかのように続ける言葉は逆に癒しにさえなる。

アスランにとってのキラはそれが大切だった。

思い違いをしないで受け止められる力。

それが自分にとっての自信。

 

「僕もね…無くなる気がするよ、僕が。」

「どういう…」

告白のように儚く口にするキラに凝視しても、自分が見ている綺麗なままだった。

「言うのはたやすいけれど、僕は分からない。僕は君と結婚して変わるかもしれない。

 それでも僕は君の隣にいようとする。でも、君は・・・?」

「お前こそ、今更だな。」

即答に答えると、キラは面食らった表情をし、微笑んだ。

 

「うん。」

それだけ言葉にして…。

 

 

 

 

 

日々が暗いと思い始めたのはいつからだったのだろうか。

 

疑問は形とならず消えてゆくことが多い。

それを分かっているから無駄だと分かって自嘲する。

それを見てアスランは僕に近づきどうしてかを聞くのだから。

それが逆に困って笑って「何でもないよ」というのが多かった。

 

幸せかもしれない。

でもそうじゃないかもしれない。

なってみないと分からない永久の迷路。

 

こんな僕でも貴方の支えになれますか?

 

 

ささやかな想いとは裏腹に、後ろで何があるのかは未だ検討もつかず。

それでも想ってくれる人がいて…

笑いかけてくれるならば、側みいても許されるのではないかと思うようになっていた。

 

「ねぇ、アスラン。今幸せ?」

 

 

当然の如く質問をされて、初め驚いた表情をしていたが、すぐにまた微笑んで…

「当たり前だろ。」

って本当に優しく笑うんだから…

でも僕が負けたのはそんな君だって思えるし、どんな君でも僕は好きだから…

そんな事言っていると、調子に乗るから余り言わないようにしているとつい出てしまうときがある。

なぜか、と考えていると、ふと一つの事に気づく…。

 

『それが本音だから』

 

だから、今でも側にいる幸せを感じてしまうのに、これ以上の側なんて考えられないのに…。

 

だから、極上の幸せ。

僕にできる事ならば何でもするよ…。

そう言えるように…。

そう…言えるように、僕は祈っていた。

 

「僕は、神は信じられないけれども、君だけは信じられるから…」

 

君が笑ってくれるなら、僕は……

+++++++++++++++++++
しばらくお休みしてしまいまして、申し訳ないです。
以後は管理にも気をつけていきますので。
さて、キラが弱ってきている感じがします。
寝ている場合じゃないわ、アスラン!!!