アスラン生誕記念リレー

 キラはとてもいい人だと思う。

 お人好しとか、まあそう言う面もあるけれど、優しく、人の気持ちをよく分かって親身になる、そういう事が自然にできる人だ。

 そういう、包み込んでくれる優しさを持ったキラが俺は大好きだ。

 

 

 

 戦争中は、キラのことばかり考えていた。

敵であったときは、その運命を恨み、キラが撃たれないか、自分が撃ってしまわないか、そればかり心配し。共に戦い始めてからは、いつキラが危険な目に会うか、俺から離れるかと心配し。

最後の戦いでは、戦力の関係からキラとは別行動をとらなくてはならなかった。そのときの不安。

別れて敵同士だった頃よりも強い恐怖があった。

だから、最後、本当に最後にキラのフリーダムを見失ったとき、俺がどれほど心配し、心を痛めたか。

 

本当に、本当に大切なキラ。俺の全てより、世界中の誰よりも大切な人。

 

 

トリィがすっと飛んでいったとき、本能的にキラがこの先にいると分かった。

 

カガリを急かして後を追い、キラをやっと見つけたときの、あの嬉しさ。

けれど。

ふわりと漂う身体は、とても儚く、消えてしまいそうに思えた。

だから、抱きしめにいった。

もう、離さない。離せないから。

 

座っていたところを蹴って飛び出し、ぴくりとも動かないキラの元へと行った。

不思議と、キラが儚くなっているのではないかという思いは無かった。

 

捕まえるまでが、とても長かった。

やっと捕まえて、腕の中に入れて。

 

涙が出た。

 

 

 

溢れた想いを伝えたくて。俺は。

「愛してる」

 と。

 キラに、伝えた。

 それまでとは、重みも、想いも違う“愛”を。

 

 キラは腕の中、ふるりと震えて。

 おずおずと、腕を回してくれた。

 腕から伝わる重みが幸せで。

「ああ、キラと2人、今生きているんだ」

 そう思った。

 

 

 

 

 それからは、毎日が幸せで、不安だった。

 

 毎日、キラを見る、キラと共にいる幸せ。

 毎日、いつキラがいなくなるか、消えるかという不安。

 

不安は底の無い沼のように、淵にある俺を誘う。

 

 

縛り付けたくない、でも、そうしないと不安でしようがない。

そうして考えたったのが、結婚。

いつも側にいると、縛り縛られるための、儀式。

 

でも、キラが受け入れてくれるか。

そこが不安だった。

 

けれど。

 

『…いいよ。結婚しても』

 ぽつりと漏らされた言葉に、俺は思わずぱっと顔を上げた。

キラはきっと俺の立場や男同士であるということを気遣って反対すると思った。そしてその予想は見事的中して。

 だから正直、キラが受け入れてくれるとは思わなかった。

俺は焦がれるほどに望んでいたけれど。

『一緒に居たいと思ってるのは、君だけじゃないんだよ。』

 頬を捕まえられ、こつん、とおでこが合わせられた。

 いつもはこんなことキラはしないから、ああ、少し甘やかしてくれているのかな、と思うと、無性に幸せで。

「・・・ありがとう。キラ。絶対幸せにするよ。」
 そう言って、言葉にならない幸せを、キスで。キラに伝えようとした。

 

『僕は今でも十分幸せだよ。アスランと一緒だから。』

 キラの手を掴んでいた俺の手を外し、テーブルの横にすっとたったキラは強くて、でも同時に守ってやりたいと思わせる。

 俺も席を立ち、力の限りでキラを抱きしめた。

(ああ、やっぱり)

温もりを分かち合いながら、腕の中をふと思う。

(この温もりが俺以外のものになるのは、絶対に耐えられない。)

 

 

 

 

 

「キラ、愛してる。俺には、キラだけだ…」

 耳元でそう囁き、そのままキラの耳朶を舐め上げ、甘噛みする。それだけでキラの身体はふるふると震えた。

更に下に下りて、首筋やうなじを丹念に愛撫する。時には軽く噛んだり、所有印を刻んでみたり。そのたびに、キラはきゅっと俺に縋り付いて来た。

「アス…アスランっ」

 可愛らしい声で俺の名を呼ぶのが嬉しくてたまらない。首に唇を這わせたまま、キラをきゅっと抱きしめて尋ねる。

「ベッド行く――?」

 無言のまま上で頷くのを感じ、俺はキラにキスをした。舌を絡めて吸い上げながら、軽いキラの身体を抱き上げる。向かう先は、俺の寝室。

 

 

「キラ。可愛い、俺のキラ。必ず、幸せにするから……」

 聞こえるか聞こえないか、ごく小さな声で俺はそっと囁いた。

 

シーツの波にキラを横たえ、上からそっと抱きしめる。我慢なんて出来なくて、俺は早くもキラのシャツの下に手を滑り込ませる。

「あっ……アスラン、ねぇ…っ」

 キラが強請るように甘い声を漏らすのを聞きながら。キラの全てに触れ続けた。

 キラは誰にも渡さない。

 この声も。誰にも聞こえなければいい。

 

 キラの高く甘い声を聞きながら、俺はその身体に没頭していく。

 

 

 

俺たちの夜は、まだ始まったばかり――――。

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一条様のアスランバージョンのようになってしまいました。
話が進んでおりません。
まあそれはいいんですが(よくない)
最後はね、もう、皆様の想像にお任せします。
生ぬるい、最後まで書くんなら書け、
という意見が出れば、書こうかなとも(番外で)思いますが。
これを読んでもらった友人ぱちが、ひとこと。
冒頭のアスラン、戦争中はキラのことばかり考えていた。
「不謹慎な!」
――確かに。書いた私が言うことじゃないですが。
でも、本当にアスランはキラしか考えてませんから!!