「違うの。」

ふる、と小さく振った頭の動きでポタポタと涙が零れ落ちる。だからそっと顔を傾けてキラの目元にキスを繰り返した。

 

「アス・ッラン・・に、守られて・・ばっか・・じゃない、僕で居たいのに・・ふぇ・・」

かっこよくて、優しくて、自分に厳しい。何でもできて、僕を守ろうとしてくれる君の、伴侶として、支え合い、補う者として隣に在りたいのに。僕は・・・ 

 

 

 

「キラ。俺は、お前と居られるのが何より幸せなんだ。この指輪で繋がってて、今まで家に帰れば独りだったのに、一番大好きなお前が『お帰り』って言ってくれる。そういう時間が何よりかけがえないもので、俺を癒してくれるんだよ?」

僕の指輪に触れて、こつん。とおでこ同士をくっつけて至近距離で優しい甘い声でアスランが微笑む。

 

 

「癒・・し?」

「そう。俺の体が結構頑丈なのは知ってるだろ?でも俺の心はたった一人にしか守れないんだよ?」

 

「・・・ぼくっ・・が?君の?」

しゃくり上げながらおどおどと小さな声。

 

 

「そう。キラだけ。キラが男なのはよ〜く分かってる。未だコーディネーターの出生率の問題が解消されずにいるのも事実だ。だけど、ダメなんだ。お前以外の誰かとなんて、俺は・・・最後の頃の父みたく笑えない人間になっちゃうと思う。」

 

「アス」

「俺がね、俺でいられるの・・・本当に月に居た時みたいに何でも出せるのはキラだけなんだ。」

「う・・ん。僕だって・・・アスランとだよ。」

 

 

でも・・・・いいのかな?僕で。本当に?僕より元婚約者で希望の歌姫・ラクス。あるいはオーブの戦姫・カガリ。彼女達のどっちかのが政治的にもいいとかお似合いだとか・・・って言う囁きも耳にしてしまっているから、素直に頷けない。僕だってアスランがいいのに。

 

 

 

 

開いたままの扉からはキラの泣き声。アスランが宥めるのに、おずおずと応えるのが聞こえる。

 

キラも、ヤツの事が一番なんだろうさ。普段の二人を見てりゃ分かる。でも、開き直っちまえば我が道の坊ちゃん・アスランより優しいキラの事だ。色々周りのこととか気になってしまったりとかして正直になれなかったりグルグル考えこんじまうんだろうなあ。

 

 

アスランがキラを、キラがアスランを見たり語ったりするのは二人の思いが表れてて・・・・たまにからかうけど俺は微笑ましいと思ってた。両極に起ち思い悩みつつも剣を交わしてたとかそういう辛い事を乗り越えてやっと手を取り合えたんだから。

 

 

キラはアスランを信じられないんじゃなく。怖いんだろう。奴が傷つくかもしれない事と、アスランを自分の事で批難されるのが。

 

 

ガキなんて望んだから簡単にできるもんじゃないし。周りのその他大勢に誰か一人の気持ち。その人の“本当”、“真実”なんて分からない。回りが言う事なんていい加減な周りの勝手な理想なのに。

 

 

命は一つっきゃないんだ。思うように生きれば・・・と俺は思うし、旦那(アスラン)の方も同感だろう。だけど、奴の腕の中の泣き虫なお子様にはなかなか割り切れないらしい。

 

 

 

せっかくくっつけた二人。さて、どうしたもんか。キラが泣いてて落ち着かないのはアスランだけじゃない。最近知り合ったばっかの俺だって、泣き顔は見たくない。どうしたもんか。

 

がしがし、とセットしてある金髪を乱していたら黙りこくっていたイザークが二人の空間に入って行こうとしてるじゃないか。

 

 

「な・・ちょい待てよ、イザーク!」

慌てて片腕を掴むが、うるさい。と払われすたすたと入って行ってしまう。・・・・・。困った。でもここで二人して踏み入って・・・ってのも何と言うか・・・まずくない?マズイよな?

 

 

 

 

「お前、キラ」

「・・・何の用だイザーク。今は外してくれないか?」

びく、と震えた肩を抱いてアスランがきつい目で見上げた。

 

 

「今だから言わねばならんだろうが、お前はこいつの親か?馬鹿者が」

「場の空気が読めないのか?デリカシーの無い奴だな」

「やめ・・アス」

 

おずおずと顔を上げるキラ。ごしごしと幼い仕草で目元を擦って息を落ち着けようとしている。

 

「貴様は・・・いや。キラ・ヤマト。お前は・・・・」

「は・・い?」

 

 

「この馬鹿をどう選んで誓った?」

「え?」

 

 

 

「それをすると、決めた時だ」

「え・・と、っ・・これ?」

 

キラが首を傾げながら指輪を向けると仏頂面のイザークが頷く。

 

 

 

 

思い出の花と月の下、“二人で一緒に生きて、幸せになる為”これを受け取ったんだ。

 

周りの幸せと僕等のそれは違うって、分かってるのにね。どうして僕は怖いんだろう。

 

 

 

 

 

 

「あの・・・・お前等がそのだな・・・・公共の面前でその・・・ああいった事を晒すのが不味いんだ」

急に顔を背けた銀髪の影から覗く耳が赤く染まっている。

 

 

「イザーク?もしかして・・・・」

「うるさい。この色ボケが!!」

 

くるっと振り返ってアスランの頭を拳で殴る。ガツン!と痛そうな音。僕はびっくりして固まってしまった。

えっと・・・イザークさん。の言いたいことって・・・・えっと・・あれ?

 

 

 

「乱暴だな、分かるように言ってくれないか?イザーク?」

「・・・色ボケでにやけたお前に言ったとて言葉でも通じないんじゃないのか?」

 

バチバチ、と火花が散ってるようなキツイ睨み合いが始まっちゃったよ。どうしよう??

 

 

 

 

「あちゃ〜」

こっそり覗いていて苦笑するしかなかった。イザークが感情をだ、怒りでなく謝るとかっていう方に、しかも相手がアスラン。って言うのは元々難しいパターンだった。

 

それに加えてキラが絡み、イザが自覚というか、理解し難いらしい恋愛表現みたいのを見せられてきてて混乱してるから・・・・・混乱しつつも一言イザークなりには侘び系の言葉を口にしたのに・・・・ああなってしまってる。

 

 

キラに謝るみたいに行きかけて、よし!と密かに拳を握ったのに、アスランと喧嘩になりつつある。というか、始まってる?あ〜あ、俺も一緒に部屋入っておきゃ良かったのかねえ?

 

 

 

昔っても、そう言える程じゃないけど、見慣れてる二人のいがみ合いも、キラには見慣れないモノらしい。濡れた目元のまま、びっくりして泣き止んでオロオロし出している。

 

パチ、と同じ紫の大きな目と視線が合うと

『助けて!!何とかして!!』

と救難信号をキャッチした。

 

 

もう、なるようになれ。だ。アスランとキラの事で俺の嬉しくない呼び名返上に繋がるかも知れないし・・・とりあえずは、いつものを終わらせてやるか。

 

 

 


仲良くなったのに、この二人は、というかキラたんはやっぱりさん。
好きなら胸に飛び込んじゃえ!!
んで、世界からアスランを掻っ攫うんだ!!!!
なんてこぶし作ってパソの前で叫ぶ私はバカですか…
ディア、傍観してるんならおかっぱさんを止めて、キラを守ってあげなさい!!
でも、イザも好き。
というか、ディアイザ好き。
邪魔しちゃダメだろ?とかいいながらこの後イザはディアに…ムフムフ
(妄想)