「あれ、アスランもう戻ってきたのかな…?」
「違うんじゃねぇ?いくらなんでも早すぎるだろ」
バンソウコウを持ったまま期待を入り混じった瞳で扉の方に目を向ける。
あーあ、目の色がもう違うぜ…、苦笑しながら自分も目を向けると
かつかつと音を響かせ入ってきた人物は、
「何だ、お前等ココにいたのか」
イザークで。
少し残念そうに笑みをこぼす。
その表情を紛らわす様に少し多きな声を上げて、
「あ。僕、イザークの分のコーヒー淹れて来るよ」
相手の返事も待たず、ぱたぱたと音を立てて衝立に向かっていった。
「どうかしたのか?キラの奴。」
首を傾げながらキラの向かった方に顔を向ける。
「さーね。俺は知らないよ?」
くく…と押し殺した笑いに眉を潜めたイザークに、
「悪い、悪い」
「思ってるんだったらそれ止めろ。」
ふん、と首を振り拗ねるイザーク。
まずい、と思い宥めすかしているとキラが戻ってきた。
ことん、とカップを置きイザークに声をかける。
「はい、どうぞ?」
「わざわざ、すまんな…」
礼を言いコーヒーに口を付ける。
ふぅ…と、カップを置き一息つくイザークに
「忙しいのか?」
気遣うようにディアッカが言う。
それを、嘲る様に鼻で笑う。
「俺がお前に心配されるとは落ちたもんだな…、」
「その言い方はないだろ…おい」
「……いいな…」
ぼそっ、と零した言葉。
自分でも言ったなんて意識はない。
だけど。
「寂しかった?」
唐突に声が上から降ってきた。
え…。
そんな。
まだ、戻って来ているはずがない。
大体が。
扉が開く音。
しなかったし……
「アスラン。お前もコーヒー飲むか?」
イザークが軽くカップを掲げ言う。
今、何て言った?
アスラン?
ば、と後ろを振り向くとホントにいて。
呆然と、まじまじと眺めてしまう。
その様子にクスクスと笑うアスランを見て現実に引き戻される。
何、言ったら良いんだろう。
急な展開に頭着いてこず、考えるも良い案は浮かばず。
そんな事していたらアスランが苦笑しながら先に声を発した。
「ただいま、キラ。少しは休憩できた?」
「あ…うん」
「キラは何時も仕事し始めると身体休めること忘れるからな…、注意しろよ?」
すと、隣にアスランが座った。
「キーボードは今、丁度良いの無かったから発注してきたから…キラは2,3日休みね?」
「えっ!!?」
「丁度良いよ。最近休み取ってなかっただろ?」
「でも…」
言い渋り、何か言いたげにアスランを見つめるキラに対しつい苦笑してしまう。
その表情にむっと顔を顰め、言葉を紡ごうとした時、
「…アスラン、貴様、人の話し聞いてないだろ…?」
ばんっ!と机を強く叩き、勢いよく立ち上がる。
イライラと機嫌を悪そうにし、キラの方に顔を動かした。
今度は何なんだと言わんばかりなアスランを尻目に見当違いな言葉を発する。
「……キラ、虫にでも食われたか?ソレ」
「……は?」
誰が出したか分からない、間抜けな声。
「否。ほら…コレだ、コレ」
とんとんと自分の首筋を指で場所を示す。
「………っ!!」
意味を理解した途端、キラの顔は一気に赤くなり顔をうつむかせた。
ディアッカはあーあ、と可哀想にとキラに視線を向ける。
そして、イザークは思い出したように言葉を紡ぐ。
「……そう言えば、アスラン貴様にも付いてるよな?首筋に」