花火

 

 

人でごった返す夜の海辺。昼間は倉庫街のそこには今、敷物を敷いて座り、談笑にふけるカップルや家族連れがたくさんいた。

「人、多いね……」

「ああ」

「傍から見たら珍しいだろうね。女の子同士ならとにかく、男二人で花火って」

 ぽつ、と呟かれたそれに、アスランは苦笑するしかなかった。

 今日は地元の花火大会だった。こういうイベント物にしては珍しく、アスランがキラを誘い、ここまでやってきたのだ。

「キラ、こっち」

 アスランがぼんやり立っているキラを手招きする。

「こっちのほうが人が少ないって言ってたから」

「――誰が?」

 耳聡くその部分を聞き逃さず、キラはアスランの周りの人物を思い浮かべた。しかし、そういうことを知っていそうだと思えるような人物に思い当たらない。

「ラスティとミゲル」

「……なるほど」

 言われてみればそうかもしれなかった。中学から大学まである私立の学院に通う二人の、三年上の先輩である彼らなら、そういうことを知っていても不思議ではない。何しろ二人とも浮いた噂が後を立たないといわれるほどかっこいいのだから。

 そんなことを考えていると、道は細くなり、舗装もされてない脇道になっていた。こんなところがあるとは知らなかったキラは、黙ってついていくしかない。

「着いたよ、キラ」

 そういってアスランが立ち止まる。

「なんか倉庫に隠れてあまり見えないらしいんだけど、昔緑を残そうっていって公園を作りかけたところの名残らしいってさ」

 アスランが説明する。確かに人がたくさんいる倉庫街に程近いけれど、こんなところがあるなんてキラも気づかなかった。他の人も多分そうなのだろう。そういう意味では確かに穴場であった。

「おいで」

 アスランがキラの手を引いて、下からは見えないような茂みに隠れたところへ連れて行く。打ちっぱなしのコンクリートの土台があったので、二人で簡単に砂を払ってそこに座る。

 待つほどもなく、花火の打ち上げが始まった。

「ぅわー……綺麗だね――」

「あぁ……」

 本当はキラのほうが綺麗だけど、という言葉は飲み込んでおく。かわりに、隣のキラをそっと引き寄せ、頭を自分の肩に持たせかけるようにさせた。

 キラも抵抗はせず、黙ってされるがままになっている。

 アスランは肩口のキラの頭に、こつんと自分の頭をつけてお互いにもたれかかるようにする。肩に置いた手が暖かかった。

「夏で暑いのにさ、こんなにくっついて。なにやってるんだろうね、僕たち」

 くすくす笑いながら言われて、アスランはちょっと拗ねたように言った。

「キラは嫌なわけ?」

 微妙な感情の変化を聞き取ったのか、キラが下から覗き込んでくる。

「ううん。嫌じゃないよ」

「なら、いいじゃないか、外でこんなことできる機会なんて、そうないんだし、さ」

 そういって、アスランはキラの唇にそっとキスを落とした。





   




            
消化不良ですね。ええ。これを書く3日前、地元の花火に私が行ったんです。なんでも、大会史上最高の二千          発をあげたんだそうで。大変に美しかったです。
            ほんとは、キラを女の子にして、音がちょっと怖い!なんていわせたかったんですが、いまどきそんな希少価値         抜群な子もいないだろうと思い直しまして、こうなりました。にしても、早かった。最短42分ですよ(計るなよ)。短いで         すけど。暑さで根性が尽きました。気力があればそのうち書き直したり、続きを更新したりするかもしれません。消化         不良の方は掲示板などでせっついてみてくださいな。